病児・家族支援研究室 Lana-Peace(ラナ・ピース)
Lana-Peace 「大切なお子さんを亡くされたご家族のページ」
大切なお子さんに先立たれたご家族のために…
 
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僕は無事なんだから
―交通事故で突然亡くなった少年が伝えたかったこと―

交通事故でお子さんがあなたの元からさよならしてしまった時、突然の出来事に、信じられない気持ちでいっぱいでしょう。「もう会えない…」その悲しみと喪失感は計り知れず、「あと1秒、ずれていたら事故には遭わなかったのかもしれない」と悔やんだり、事故に対する抑えられない憤り。それらの感情はいつしか、あなたの家族関係を冷え切ったものにしてしまうかもしれません。
でも、お子さんはそういう家族のすべての感情、動きをずっと見守っているのです。そして自分のせいで、家族が苦しい時間を過ごすことを何より憂い、どうかそれぞれが幸せになってほしいと、心から願っているのです。今日はそうしうたお話をご紹介したいと思います。

1990年11月の夕暮時、自宅近くの交差点で、12歳の少年が車にはねられてしまいました。病院に運ばれた時、少年は意識不明の重体でしたが、翌朝、残念ながら息を引き取ったたのです。

その後、ご両親はジョージ・アンダーソンさん(詳しくはこちらをご参照ください)のリーディングを受けられました。リーディングの時、少年に寄り添っていたのは、母方祖父でした。祖父は少年よりも先に亡くなっており、交通事故で亡くなった孫を出迎えて、お世話をしてくれていたのだそうです。少年は、亡くなった当時のメッセージをジョージさんに伝えてきました。

「まったく苦しむことなく、
あっと言う間に死んだと言っています」(略)

「何にぶつかったのか知らないうちに意識がなくなって、
死んでいたと言っています」


引用文献:
糸川 洋(2012)『トゥルー・ミディアム』Kindle版,
第二章 子供を亡くすこと 「息子の事故の真相が分かった!」

ご両親は警察から、息子さんが衝突した時に前方に投げ出され、頭から落下したと聞かされていました。「どんなに痛かったことだろう…」と胸が痛んでいたと思います。だから少年は両親に、苦しんだわけではないことを伝えたかったのでしょう。

そして少年は事故の原因をジョージさんを通して伝え始めました。それは言葉で説明するのではなく、その状況を表すニュアンスをジョージさんに送ってきたようです。

「これが起きたのは夜ですか」

「いいえ」

「ドライバーの視界がさえぎられているような感じが
するんです」

「うーん……」

「つまり見通しの悪い角で突然、息子さんの自転車が現れて、
ドライバーが気付いたときには遅かったというような……」

「そうですね」

「やっぱりそうですか、
息子さんは、ドライバーには責任がない、
まったく自分のことが見えなかったのだから、
と言っています」

この言葉を聞いて角野氏は不満そうだった。


引用文献:
前掲書, 第二章 子供を亡くすこと 「息子の事故の真相が分かった!」

お父様の気持ちを察した少年は別の話題に移った後、また事故の原因に立ち返ってメッセージを送ってきました。

「息子さんがご両親に先立ってしまったことを謝っています。
でも自分ではどうにもできなかった。
単に事故に巻き込まれてしまっただけだと言っています。

『僕が事故に遭ったのは、早く家に帰りたくて慌てていたから
なんだ。だから、よく確認もせずに交差点に突っ込んだんだ。
僕が不注意だった。加害者を責めちゃいけない。
あの人に責任はないよ』と言っています」

両親は黙ってうなずいた。


引用文献:
前掲書, 第二章 子供を亡くすこと 「息子の事故の真相が分かった!」

また、少年は自分が亡くなった後の家庭の雰囲気についても心配していました。特に妹や弟のことです。

「妹や弟に過保護になっているんじゃない?
と言っていますが、思い当たりますか」

「ええ、そうかも知れません」

「弟や妹が僕の影を背負って生きていくのはまずいよ、
と言っています」

「はい」

「年齢の割に大人びていますね」

「そうなんです」

「それに、やりたいことがあれば、何がなんでもやり通す、
言いたいことがあれば、何がなんでも言う
という感じがします」

母親がそう、そう、そのとおり、と言いたげに何度もうなずく。



引用文献:
前掲書, 第二章 子供を亡くすこと 「息子の事故の真相が分かった!」

そして少年は、親御さんの苦しみにも目を向けていました。

「息子さんは、あなたがたが悲しみ、苦しむ様子をあの世から
見て知っていますから、どうか、自分が無事であることを
知って心を安らかにしてほしいと言っています」

「はい」

「それから、
『もっと車に気をつけるように言っておけばよかった、
なぜもう少し注意をしなかったんだろうとか、お父さんは
いろいろ考えているようだけど、今さら何を考えても、
起きてしまったことは変わらないよ。
僕はこちらにいて無事なんだ。
もう誰も僕のことを傷つけることはできないんだから、
心配するのはやめて、心を安らかにして』と言っています」

「はい。わかりました」


引用文献:
前掲書, 第二章 子供を亡くすこと 「息子の事故の真相が分かった!」

それまでは人間は亡くなったら無に帰する、もう二度と息子に会えない、と思っていたお父様でしたが、息子さんからのメッセージはしっかりと届き、お父様の心を変えていったのです。お父様は一生懸命生きなくてはいけない、と思うようになり、息子さんにも朝晩、語りかけるようになったそうです。

そしてイライラしやすく、感情的になりやすかった心境が、落ち着くようになりました。その理由をリーディングを通訳された糸川氏に、次のように語られています。

―― なぜそのような落ち着きを得たんでしょうか。

「自分の人生の終点がわかったからでしょうか。
つまりあと何十年か分かりませんが、生きているかぎり、息を
引き取るそのときまで自分の人生を大事にしたいと思うように
なったんです。
そうすると、仕事のうえでもいい影響が出てきました。
無理をしないようになったんです。私は貿易関係の仕事をして
いますが、貿易にはお客さんとのトラブルがつきものです。
それを無理やり解決しようと焦るよりは、自然に任せたほうが
よいということを発見しました」

―― それは具体的にリーディングのときに息子さんから言われたことですか。

「いいえ、そうではありません。
ただリーディングがきっかけになって、いろいろな本を読む
ようになったし、精神的なゆとりが出てきたのだと思います」


引用文献:
前掲書, 第二章 子供を亡くすこと 「リーディングへの感想 その1」

息子さんの存在を毎日でも感じていたかったお父様は、2回リーディングを受けたそうです。そして息子さんからのメッセージを通して、息子さんの人生を新たな眼差しで見つめるようになりました。

―― 息子さんの死について、ある程度の気持ちの整理がつきましたか。

「息子は十二年間という期間を神から与えられたのだと
思います。
最初はなんで死んだんだ、何もそんなに早く死ななくても
いいのに、と悔しい気持ちでいっぱいでしたが、
最近は、あれが息子の宿命だったんだと思います」

――「十二年間という期間を神から与えられた」とおっしゃいましたが、その神とは具体的にどんなものですか。

「うーん、そんなにはっきりしたものではないんですが。
つまり人間の力を超える何かでしょうか。
つまり人の生き死には、人間の力が及ばないところで
決められるのだということですね。
私はリーディングを受けてから、急に宗教とか死後の世界に
関する本を読み始めまして、今ではその関係の蔵書が三十冊
ぐらいになりました。
そして心の落ち着きを得ることができました。
これはジョージさんのおかげだと感謝しています」


引用文献:
前掲書, 第二章 子供を亡くすこと 「リーディングへの感想 その1」

もしかしたら人間はこの世で果たす使命や役割を皆「等しく」抱えて生まれてきているけれど、それを何年かけて果たしていくかによって、人生の長さが異なるのかもしれません。たとえばお父様は息子さんからのメッセージによって、逆境の中から自分が一回りも二回りも強くなり、そして優しくなり、より良い過ごし方を歩むようになりました。
なかなかそのように人を変えることはできません。
でも息子さんはそれを立派に成し遂げたのだと気付くと、彼はお父様にとって導師のような役割を果たすことが、この世での役割だったのかもしれません。
自分の生き方を変えるほど、強い影響力を持つ人との出会い、それはやっぱり強いご縁があったからこそですね。息子さんからのメッセージに心を開き、耳を傾け、変わっていった父。その姿を何より嬉しく思っていたのは息子さんであり、また逆に、父がそのように変わっていったことにより、息子さんのこの世での役割を完了、全うすることができたとも言えるのかもしれません。つまり父の気付きと変化のおかげで、子が人生を総仕上げすることができた、とも言えるのではないでしょうか。

 
先立ったお子さんはあなたの幸せを願い、あなたの気付きと変化を求めていつも心を砕いていることを、どうかお忘れなく……。  
2016/8/12  長原恵子
関連のあるページ(ジョージ・アンダーソン氏)
「親の怒りのエネルギーを憂う子」
「息子に届いた母の祈り」
「たとえ生まれ出ることはなかったとしても」
「僕は無事なんだから」※本ページ
「時を大事に生きるならば」
「言えなかった言葉の裏」
「思いが届かないもどかしさ」
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「この世の命は短くとも」
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