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病気と一緒に生きていくこと
信じる力を味方につけて

左脳出血に倒れ、その2週間半後、ゴルフボール大の凝血塊を手術で摘出された神経解剖学者のジル・ボルト・テイラー先生(詳細はこちらをご参照ください)は、術後8年かけて身体的・精神的機能を回復させていきました。YouTubeでテイラー先生が対談されている様子を見ると、すっかりお元気で、とても脳出血を経たようにはお見受けしないのです。
そこまで驚異的な回復を遂げられたのは、何が理由なのでしょうか?
もちろん個人の事情は大きく異なるとは思いますが、信じる力を味方につけたのではないかなと思います。
テイラー先生は、脳がダメージを受けても適応する力があることを強く信じていました。そのような信念は身体が治ろうとする力を、細胞レベルから応援することになったのだと思います。
つまり信じる力はテイラー先生の身体の中で、治る力へと変容していったのでしょう。
そしてもう一つ回復の原動力は、テイラー先生が目標を小さくしたことだと思います。テイラー先生は少しでも達成できたことがあれば、それを喜び、感謝につなげていくことを繰り返していかれました。病気をされるまでは注意を払うこともなかった何気ない動作、行動…でもそれは一つ一つの細胞の働きが協調性を保っているからこそ、成り立つものなのです。
そこにテイラー先生の神経解剖学者としての専門的な知識(どの細胞がどんな風な働きを司っているのか)が重なることにより、各細胞への尊敬と感謝の念は、ますます深まったのだろうと思います。

わたしがきちんと回復できるかどうかは、あらゆる課題を小さく単純な行動のステップに分けられるかどうかにかかっていました。(略)立てるようになる前にからだを揺すったり寝返りをうったり、また、舗道を歩いているときには、舗装の細かい割れ目を踏んでも大丈夫なことを学んだり。
こうした小さなステップの積み上げが、最終的な成功の決め手になったのです。

引用文献:
ジル・ボルト・テイラー著, 竹内 薫訳(2009)
『奇跡の脳』新潮社, p.144

もう少し具体的に、それを見てみましょう。

たとえば一日目、あおむけになるための「よいしょ力」が戻る前に、からだをずっと揺すっていました。こうしてからだを揺すっているあいだに、からだを揺することが今のわたしにとって唯一の重要な活動だったことを悟りました。
からだを起こすという最終目標の達成に焦点を絞ることは、賢明ではないのです。
それは、はるかに現在の能力を超えていましたから。もし起き上がることを目標に定めて試し、何回も失敗したら、自分の無力さに失望し、何もしなくなっていたでしょう。
起き上がる努力を、からだを揺らす、あおむけになる、という具合に小刻みな段階に分けることによって、いつも思う通りにからだを動かせたと思えるのです。
そしていい気持ちで眠りにつける。

引用文献:前掲書, pp.100-101

達成感を日々味わいながら、一日を送れるようになると、心の健康にとっても本当に良い影響をもたらします。
私も自分の術後の日々を振り返ってみると、療養中の強敵だなぁと思うことは、一日という時間の流れが何か無意味に思え「あぁ今日も何も進展なく終わってしまった」という虚無感にかられることです。
自分にとって何の励みにもならないことはわかっていますが、そういう気持ちを払拭できるほどの強い力が、湧かない日がありました。

テイラー先生はこんな風に切り抜けていかれました。

ふたたび語彙を習得することは、脳の中の失われたファイルの一部を取り戻すことを意味するため、ワクワクしました。 (略)
うまく回復するためには、できないことではなく、できることに注目するのが非常に大切。
毎日、何かを達成できたことに喜びながら、どれほど上手くできたかにだけ焦点を絞り続けました。
歩けるか、話せるか、自分の名前を覚えていられるか、といったことにはいちいちこだわらない。

引用文献:前掲書, p.142

病気が治っていくため肝心なことは、治ろうとする力を引き出すことです。「どれだけできなかったのか、反省する」ことによって人間は成長するのかもしれませんが、それは心も身体もエネルギーが満ち溢れている状態にするべきなのです。
お子さんが治ろうとする真っ只中にいるのならば、ぜひできたことを1つでも2つでも多く見つけてくださいね。目標を細分化して!
こんなに多くのことができていたのか…と驚きますよ。きっと。

 
できたことに注目すると「自分にもできたんだ!」と自信が生まれます。それはきっと、治ろうとする力へとつながっていきますから…
2014/8/8  長原恵子
 
関連のあるページ(ジル・ボルト・テイラーさん)
<当事者の立場>
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信じる力を味方につけて (※本ページ)
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