病児・家族支援研究室 Lana-Peace(ラナ・ピース)
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黄泉国の炊飯具
(東京国立博物館 蔵)
 
 
黄泉国の炊飯具
(撮影許可あり)
1 小型置カマド 2 小型羽釜 3 小型鉢 
4 小型甑(こしき)
場所・時代:
奈良県葛城市笛吹遊ケ岡出土, 古墳時代・6世紀
所蔵先:
東京国立博物館(東京)列品番号
竈 J-21439 羽釜 J-21440 甑 J-21441 鉢 J-21443
出展先・年:
東京国立博物館(東京)平成館 常設展示, 2017
 

こちらで前漢時代の明器「灰陶竈(かいとうかまど)」をご紹介しましたが、今日は日本の「黄泉の国の炊飯具」をご紹介いたします。

東京国立博物館公式HPでは「小型置カマド」「小型羽釜」といった列品名ですが、展示会場ではまとめて「黄泉国の炊飯具」と表示され(右図)、英語名では「Burial....」すなわち「埋葬」と表記されていました。
ですから日常生活のこどものままごと道具ではなくて、副葬品として出土したものなのだろうと思います。そのあたり、当日の展示パネルに解説が出ていなかったので、詳細がわからなくて残念ですが…。

さてこちらの竈(かまど)ですが高さは20cm程度でしょうか。小さくてもしっかりと再現されています。甑のことがわからなかったので調べてみると、福岡県大野城市のHPにわかりやすく書かれていました。
これを元に考えると、こちらの竈、焚火の熱を受けた羽釜の水が沸くと、その蒸気が甑(こしき)に伝わって、甑の中の米を蒸す、という仕組みのようです。
そして右の鉢もとてもリアルに作ってありますね。こちらの鉢はページ最初に登場の写真でわかるように、竈よりもうんと小さいわけですが、その内側の縁の厚みの再現には驚きました。

亡くなった後も、どうか毎日炊きたてのあたたかいご飯をおなかいっぱい食べてほしい…そんな思いが伝わってきそうな「黄泉国の炊飯具」です。

この「黄泉の国の炊飯具」を見た時、あ!と思い出したものがありました。明治大学博物館に展示されていた江戸時代のままごと道具です(2017年常設展示)。

明治大学では駿河台キャンパスに地上23階、地下3階のリバティタワ―が建設されることになり、三代目の明治大学記念館が取り壊されることになりました。そこで1995年、工事着工前の試掘が行われ、江戸時代の生活跡が見つかったのです。「明治大学記念館前遺跡」と称されたこの地には、かつて四千石の旗本 中坊(なかのぼう)氏の屋敷がありました。
 
そこから見つかったままごと道具です。こちらは屋敷跡から見つかったので、副葬品ではなくてこどものための遊び道具ですね。竈には羽釜が2つのせられています。こんなふうに江戸時代ではご飯を炊いていたわけですね。竈の下で薪のパチパチとはじける音や、ご飯の炊けるシューシューと上がる蒸気の音が聞こえてきそうです。
そして竈の前に並べられた白い小さな陶器の茶碗と深緑の釜飯用の釜。こちらもとてもリアルです。このミニチュアの世界はこどもだけでなく、大人もワクワクしてきますね。
羽釜の蓋の部分は上から見てみると、持ち手が再現されています。素朴な作りの中にも細かさが光ります。蓋をあけたらほかほかの玄米ご飯が出てきそうです。
古墳時代の副葬品のノウハウは、江戸時代にはこどもの遊び道具としていかされるようになったのでしょうか? こどもたちが楽しく遊べるようにという生の世界、そして亡くなった後もおなかいっぱい食べてほしいという死後の世界観も何か一続きであるような……。
2017/11/27  長原恵子