病児・家族支援研究室 Lana-Peace(ラナ・ピース)
Lana-Peace 「大切なお子さんを亡くされたご家族のページ」
大切なお子さんに先立たれたご家族のために…
 
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お子さんを亡くされた後、何をする気にもなれず、一日が長く、気分が滅入ってしまうという方がいらっしゃいます。
でもそれは決して悪いことではないと思います。
例えば抑うつ状態について、アメリカの医師 アンドルー・ワイル先生は次のように記されています。

抑うつは病気のようにみえるが、実際には悲嘆のプロセスの進んだ段階である。なぜなら抑うつは、無意識のうちに喪失を受容し、死んだものを生き返らせるという幻想を手放したことをあらわしているからだ。

その受容が意識化されたときに悲しみは終わり、喪失経験をわがものとして(それを人生のあらたな局面を切りひらく、天与の贈り物として感じる場合さえある)、感情はふたたび平静にもどるのである。


引用文献:
アンドルー・ワイル著, 上野圭一(1995)『癒す心、治る力 自発的治癒とはなにか』角川書店『癒す心、治る力』, pp.123-124

お子さんが亡くなった当初、「いつか、ただいま!と出先から戻ってくるのではないか…」といった希望を、心の奥から消せない方、多くいらっしゃると思います。でもそのうち、それが「叶わないのだ…」と思うようになってくると、心の落ち込みは一層深さを増していきます。

ただ、それはあなたがお子さんのことを見放したということではありません。どうしても叶わない願いなのだということを、あなたがご自分の心で認識しているからこそ、落ち込み、抑うつ状態が起こってくるのだと思います。
そのように考えていくと、落ち込むということは、辛い事実と向き合っていく上で生じてくる、自然な心の反応なのです。
ワイル先生は「悲しみは終わり、感情はふたたび平静に戻る」と表現されていますが、その部分は同意しかねるけれど(そんなにたやすい道ではないですから…)、でも、抑うつは変化していくプロセスの、ある局面だという理解は現実に沿っているように思います。

「いつまでも、そんなに、くよくよと考えていないで…」と励ます方がいらっしゃいますが、どうか、無理に落ち込む気持ちをさえぎらないでください。
落ち込んでいるご両親は今、大切な局面を迎えることによって、お子さんの死という事実を、ご自身の人生の一部として引き受けようとしているのですから…。

落ち込んだ時には、あたたかい食べ物・飲み物とあたたかい日差しが、あなたの力になってくれます。おいしいと思えても、思えなくても、まずは身体の内側から、物理的にあたたまるようなものを、召し上がってください。そして、お天気が良ければぜひ、近場で良いですから、出かけてほしいと思います。
とても、外出する気分にはなれない、という方もいらっしゃるはず。
でも、あなたのために外出するのではないのです。
お子さんはものを見たり聞いたり、感じたりするために必要な身体の器官をこの世ではもう手放しているのですから、あなたがその代わりになってお子さんに楽しみを伝えてあげるのです。
「電車がいっぱい通っているね」「本屋さんにこういう本が出ていたよ」「こんなお花が咲いていたよ」「あそこのおうちの子犬とすれ違ったよ」
あなたが伝えたいことを、あなたの言葉でお子さんに心の中で語りかけてほしいのです。それは必ずあなたの力に変わっていきます。

お子さんは自分のせいで、ご両親が、無為な生活を送ったり、自暴自棄な生活を送ることなど決して望んではいないことを、どうかお忘れなく…。

 
とことん気持ちが落ち込んだら、その後は気持ちが上向きになれるように、きっとあなたのお子さんが手伝ってくれますから…。   
2014/2/11  長原恵子