病児・家族支援研究室 Lana-Peace(ラナ・ピース)
Lana-Peace 「大切なお子さんを亡くされたご家族のページ」
大切なお子さんに先立たれたご家族のために…
 
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神の養子〜天国で健やかに育つ赤ちゃん〜

待ちに待った出産を前に、おなかの中で赤ちゃんが亡くなってしまった時、その悲しみと衝撃はどんなに深いものでしょう。「抱っこしてあげたかった」「うんとかわいがってあげたかった」「ひとりぼっちで寂しく逝ってしまったのか」と来る日も来る日も、涙に暮れることでしょう。
でも、あなたの赤ちゃんは大切に守られて、過ごしています。
それを強く確信できるようなお話が、ありました。
「天国を見てきた」という実在するお子さんの話、そこにはそれを虚構、虚飾、妄想などとは片付けられない真実性があるので、今日はトッド・バーポ氏の著書『天国は、ほんとうにある』をご紹介したいと思います。

トッドさんは米国ネプラスカ州インペリアル市にあるクロスローズ・ウエズリーアン教会の牧師さんです。その出来事があった当時、奥様ソンジャさんと長女キャシーちゃん、長男コルトン君の4人家族でした。
ある日、3歳10カ月のコルトン君に虫垂穿孔が起きてしまいました。炎症を起こした虫垂(いわゆる盲腸)に穴が開いて、中身の膿瘍がおなかの中に出てしまったのです。
コルトン君は非常に危険な状態に陥りました。ソンジャさんは「もうこれきりだ」と絶望的になり、トッドさんは1人病院の中にあった小さな部屋に入り、「あなたは、私の息子を奪う気か?」と叫びました。普段神に仕え、神の教えを説いている牧師さんが、神に激昂したのです。

コルトン君の手術は1時間半ほどで終わり、外科病棟の回復室に移ってきました。その時、コルトン君は言ったのです。
「パパ、ぼくが死にそうになったの、知ってるでしょ」
動揺した父は息子に良くなることだけ考えるよう、告げました。

それから4カ月ほどたった7月のある夜、コルトン君は家族の心の中に大きな一石を投じる、爆弾発言をしたのです。手術の時にコルトン君が垣間見た天国で、自分より前に生まれるはずだった(でも死産となってしまった)お姉さんに会ってきた話をしたのです。

「ママ、ぼくの姉ちゃん、二人いるんだよ」コルトンは言った。
私は思わずペンを置いた。
ソンジャはそうはせず、そのまま仕事を続けた。
コルトンはもう一度くり返す。
「ママ、ぼくの姉ちゃん、二人いるんだよ」
ソンジャはようやく書類から顔を上げ、かすかに頭を横に振った。
「ううん。あなたには、キャシー姉ちゃんがいるよね。それと……従姉妹のトレイシーのことを言ってるの?」
「ちがう」コルトンは強く否定する。
「ぼくに、姉ちゃんが、二人いるの。ママのぽんぽんで死んじゃった赤ちゃんいたでしょ?」

その瞬間、パーポ家の時間が止まった。
ソンジャの目が大きく開く。ほんの数秒前までは、母さんに自分の話を聞いてもらおうとするコルトンの試みは、あまりうまく行っていなかった。けれども、いま、キッチンテーブルの横にいる私でさえも、ソンジャがコルトンにその全神経を集中させているのがわかる。

「ぽんぽんで死んじゃった赤ちゃんがいたって、誰が言ったの?」深刻な口調でソンジヤが言った。
「その子が言ったの、ママ。ママのぽんぽんで死んだって、姉ちゃんが言ったの」

引用文献:
トッド・バーポ, リン・ヴィンセント著, 阿蘇品友里訳(2011)
『天国は、ほんとうにある』青志社, pp.164-165

コルトン君の母は驚きました。なぜなら、この世に生れ出なかったきょうだいがいることを、息子には教えていなかったからです。そして母にとって死産は、ずっと大きな痛みとして心の中に巣食っていました。

「大丈夫、ママ。あの子は、大丈夫なの。神がね“ようし”にしたんだよ」
ソンジャは、コルトンの目を真正面から見ようと、ソファーから滑り降りて、床に膝をついた。
「イエスが、養子にしたってことじゃなくて?」とソンジャ。
「ちがうよ、ママ。イエスのパパが、したの!」
ソンジャが振り返り、私を見る。あとから彼女が話したことだが、このとき、ソンジャは、は、なんとか冷静でいようと努力したものの、感極まるのをとても抑えることができなかった。

私たちの赤ちゃんは……女の子だった――いや、女の子「だ」!
ソンジャは、コルトンのほうに意識を戻す。なんとかしてその声を落ち着かせようとしているのがわかった。
「それで、その子は、どんなふうに見えたの?」
「すごい、キヤシーみたいに見えた」とコルトン。
「でも、キャシーより、ちょっとちっちゃい。
でね、髪は黒いの」
ソンジャの黒い髪。
痛みと喜びが入り交じった表情がソンジャの顔に浮かぶ。
前に、ソンジャが冗談まじりに不満を漏らしたことがあった。
「この子たちを九ヶ月間もお腹に入れてたのは私なのに、出てきてみたら、二人ともあなたにそっくりじゃない!」
でも、ソンジャにそっくりな女の子がいる。娘だ。
ソンジャの目に、初めて、かすかに水分が帯びる。

コルトンは誘導されることなく、続ける。
「天国でね、ちっちゃい女の子がね、走ってきてね、ぼくを、抱っこして、離してくれないの」明らかにその女の子からの抱っこを楽しまなかった様子のコルトンは言う。
「きっと、家族の誰かがいたから、ただ、うれしかったんじゃないかな」ソンジャがそう提案する。
「女の子の抱っこだもん。私たちは、うれしいときには、抱っこするの」コルトンは、いまいち納得したようには見えなかった。

ソンジャは、目を輝かせてたずねる。
「名前はなに? そのちっちゃな女の子の名前はなんていうの?」
コルトンはその瞬間だけ、その女の子からの気持ちの悪い抱っこについては忘れたように見えた。
「名前はないよ。パパとママ、名前つけなかったでしょ」

どうしてそれを知っているの?
「そうだね、その通りね、コルトン」とソンジャ。
「私たち、女の子だってことさえ知らなかったんだよ」
そして、コルトンは、いまでも私の頭の中で鳴り響く、あることを口にする。
「うん、ママとパパがね、天国に来るの、待ちきれないって言ってた」
ソンジャがかろうじて崩れ落ちずにいるのがわかった。
ソンジャは、コルトンにキスをして、もう遊びに戻っていいと告げた。コルトンが部屋からいなくなったとき、涙が彼女の頬を伝って落ちる。

「私たちの赤ちゃんは、大丈夫」
そうささやく。
「私たちの赤ちゃんは、大丈夫」

この瞬間からだった。心から待ち望んだ子どもを失うという、人生で一番痛々しい心の傷が、癒され始めたのは。赤ちゃんを失うということは、私にとっては、ほんとうにひどい打撃だった。ソンジャにとっては、それだけでは済まなかった。彼女は、流産によって、深い悲しみで心を焼かれただけではなく、それがまるで自分一人の責任のように感じていたのだ。

「正しいことを全部して、正しい物を全部食べて、赤ちゃんの健康を祈ってた。それでも、小さい赤ちゃんはお腹の中で死んじゃった」そんなふうにソンジャが話したことがあった。
「罪悪感があるの。頭では、これは自分の責任じゃないってわかつてても、まだ罪悪感が消えないの」
私たちは、産まれてくることのなかった自分たちの子どもは天国へ行ったのだと信じたかった。この事柄について沈黙を保っているものの、私たちは、そう信じていたのだ。

だけど、いま、ここに目撃者がいるのだ。私たちがまだ一度も会ったことのない娘は、あの世で、熱心に私たちを待ちわびているのだと。

引用文献:前掲書, pp.166-169

あなたの大切な赤ちゃんは、天国で健やかに成長し、あなたが十分人生をまっとうして戻ってくるのを楽しみに待っているのだとしたら…。
あなたはただ、自分の人生を十分に生きる、それだけでいいのです。
決して、自分でその人生を早く終わらせてしまうことなどしないで…あなたがあなたの人生を十分に生きていなければ、あなたの赤ちゃんは「ママ、パパ、こっちに来るのはまだだよ」って追い返しちゃいますよ。

 
死産した赤ちゃんは、天国で新たな命として育っています。だからどうか、もうこれ以上自分を責めたりしないで。
2015/2/15  長原恵子