病児・家族支援研究室 Lana-Peace(ラナ・ピース)
Lana-Peace 「大切なお子さんを亡くされたご家族のページ」
大切なお子さんに先立たれたご家族のために…
 
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手を握り、共に歩いてくれた天使

亡くなったお子さんは、一人寂しくしているのではありません。この世からあちらの世界へと移る時、先に亡くなったご両親きょうだい、そして仲良しの友達も迎えに来てくれます。そして更に嬉しいことに、天使もお迎えに来てくれるようです。

アメリカの小児科医メルヴィン・モース先生の本『死にゆく者たちからのメッセージ』の中には、火傷の少年の不思議なお話が登場します。
ある10歳の少年が、火事で大火傷を負いました。身体の80%以上の火傷だったということですから、少年は本当に大変な思いをしたと思います。でも少年はたくさんの力を引き出して、頑張ったのでしょう。奇跡的に助かり、そして回復して行きました。専門病院で数週間治療を受けた末、少年の自宅に近いアメリカ北西部のある市民病院に転院となりました。

ご家族は胸をなでおろし、安心したことでしょう。しかしながら転院して数日後、少年に感染症が起こって悪化し、少年は亡くなってしまったのです。突然の急変のため、その場は大慌てとなりました。
転院先の医師は誰かミスをしたのではないかと疑い、かなり荒れたようです。容態が安定して転院してきた数日後に患者さんが亡くなったことにより、自分の責任が問われると思ったのでしょうか。
そうした雰囲気は少年にとって、決してふさわしい最期の場だとは言えない思います。本当に残念です。でも、少年の救いとなるようなことがあったのです。
それは少年をケアしていた一人の看護師さんによって、目撃されました。

少年が亡くなる直前、この看護婦は、白装束の女性が少年のベッドわきに立っているのを二晩続けて目撃していたのである。
その白い服を着た女性を最初に見た夜、看護婦は、その人のことを許可を受けずに入ってきた面会者だと考えた。看護婦が近づくと、その女性は消えた。
次の夜も、彼女はその女性の姿を見た。
この日はベッドの足のほうに立って、少年に話をしていた。
看護婦はその様子を数秒間見守っていてから、部屋へ入って行ったのすると女性はまた消えた。

次の夜、少年の容体は急変し、亡くなった。少年の意識が遠くなり始めると、医師たちはパニックに陥った。
医師たちは一日中、少年の体をむしばむ感染症が進むのを食い止めようと努力していた。少年が虫の息となって横たわっているこのときも、医師たちは少年を蘇生させようと九十分間も力を尽くしていた。

医師、看護婦、呼吸器の専門医などが少年を蘇生させようと頑張っているあいだ、腹立たしいことに、ある医師がそれぞれのやり方についてあら捜しのようなまねをした。さらに、少年の遺体を囲んでみなが立ち尽くしていると、そのいやな医師は少年が死んだ責任は彼らにあると思わせるようなことをいった。
こうしたいろいろなことが重なって、このストレスだらけの一日は、その看護婦にとって人生で最悪の日となってしまった。病室を出ると、みなそれぞれの方向へ散って行った。

彼女はユーティリティ・ルームに入って泣いた。
それから三十分ほどたってから、彼女はそこを出てナースステーションへ向かった。

その行く手に、彼女はあの少年が白い服の女性と手をつないで歩いて行くのを見たのだった。

引用文献:
メルヴィン・モース/ポール・ペリー著, 池田真紀子訳(1995)
『死にゆく者たちからのメッセージ』同朋舎出版, pp.106-107

どんなに荒れた雰囲気の中で息を引き取ったとしても、しっかりと自分のそばで守り、導いてくれる存在がいるのですね。きっとその白い服の女性は、少年を守る天使だったのだろうと思います。
一人ぼっちで逝くのではなく、ちゃんと迎えに来て、天使はしっかりと少年の手をつなぎ、歩いて行ってくれたのですね。

 
お子さんの最期、どんなことが周りであったとしても、お子さんはしっかりと守られています。 
2014/10/18  長原恵子