病児・家族支援研究室 Lana-Peace(ラナ・ピース)
Lana-Peace 「大切なお子さんを亡くされたご家族のページ」
大切なお子さんに先立たれたご家族のために…
 
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安らぎと愛に包まれて眠っていた息子

昏睡状態となったお子さんのそばにずっといること、それはご家族にとって、どれほど苦しいことでしょう。「いつかきっと、目を覚ますに違いない」と希望を持ち続ける一方で、「もしかしたら、このままお別れかもしれない…」と思う気持ちが、交錯しているかもしれません。
お子さんへの心配が沸々と湧きあがり「痛いところはないか?」「辛くはないか?」と心を悩ませることも多いと思います。そしてそのまま、お子さんが目を覚ますことなく旅立ってしまった時、心配の種はずっと心の中に埋められたままで、何年も後を引く場合があります。

でもお子さんはこの世から、あちらの世界へと移っていくまでの過程で、家族の知らない間に、段々と癒される機会を得ていたとしたら…。

今日は親御さんがそれを経験することのできた例を、ご紹介したいと思います。アメリカの脳神経外科医エベン・アレグザンダー先生の所に、あるお母様からお手紙が寄せられました。そのお母様は神経膠腫(上衣腫)の18歳の息子さんを、ご自宅で、家族みんなで看取られた方でした。

アレグザンダー先生
18歳だった息子のベンは2007年の10月に神経膠腫(上衣腫)の診断を下され、その5カ月後にこの世を去リました。この手紙には、亡くなるまでの3日間に昏睡におちいっていたときのことを書かせていただきます。
死にかけている子供を見守る母として、あれほどつらい思いをしたことはあリません。

私たちは息子を症宅ホスピスで看取ることにし、息子は主寝室のべッドに横になっていました。昏睡に落ちる前から、いつでも必ずだれかがそばについて手を握っていました。そうすることに決めていたのです。決してひとりにはせずに、肉親の兄や姉、夫や娘と交代で一晩中息子の隣に横になリ、付き添っていたのでした。
私が夢を見たのは、亡くなる3日前の晩でした。夢というよリ、鮮明にそれを体験したのです。うとうとと眠リに落ちる前に、私はベンの手を握リながら、絶望、怒リと混乱に駆られ、神さまに訴えていました。そのあとで瞬く聞に、暗いながらも軽やかな天国に引き上げられ、まるで実際にそれを体験したような夢を見たのでした。

天国には穏やかな安らぎが満ち、ただ愛に包まれていることがわかリました。疑う余地などどこにもないほどはっきリと、自分が神さまとともにいることが感じられ、見回すと地球の断片がパラパラと落ちてきているのが目についたので、”これはいったい、どういうこと?”と思いましたら、自分で答えがわかっていたのか魂が答えてくれたのか、その答えがわかリました。

これはベンに起きていることなんだわ。ベンの身体が少しずつ小さくなっているところ……それがわかると同時に、私はベッドに身体を起こしたのでした。息子はもう天国に足を踏み入れていることに気づいていました。

それから2日後に、ベンはこの世を去ったのでした。


引用文献:
エベン・アレグザンダー, トレミー・トンプキンズ著, 白川貴子訳(2015)『マップ・オブ・ヘヴン―あなたのなかに眠る「天国」の記憶』早川書房, pp.147-148

ベンさんが昏睡状態に陥った3日間、それは「穏やかな安らぎが満ち、ただ愛に包まれている」世界へと、移る準備を少しずつしていた時間だったのですね。お母様がベンさんの天国への移行を確信できたことは、決して夢や幻想ではなく、ベンさんからお母様への贈り物だったのだろうと思います。ベンさんも、ご家族に「僕は大丈夫だよ」って伝えられずに逝ってしまったことは、きっと、心残りだったでしょうから…。
ベンさんは亡くなる間際、ご家族と言葉を交わすことはできなかったけれども、言葉以上の贈り物をお届けできたのだろうと思います。

 
亡くなる前、お子さんの反応が乏しかったとしても、ご家族の思いはしっかりお子さんに届き、それに応えたいと思っていますから…。
2016/2/23  長原恵子