病児・家族支援研究室 Lana-Peace(ラナ・ピース)
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病気と一緒に生きていくこと
枠を取り外す先にあるもの

先日、指揮者の佐渡裕先生の自叙伝『僕はいかにして指揮者になったのか』を読みました。テレビ朝日の「題名のない音楽会」で司会をされていらっしゃるので、お姿をご覧になった方も多いと思います。妹に勧められてこの本を手にしたのですけれど、とても良かったです。
とにかく音楽が大好きな少年が、様々なことを経て、どんな風に指揮者への道を歩んでいったのか…軽妙な京都弁で語られるウイットに富んだ文章は、本自体が指揮者によって、うまく指揮されて、調和を成しているように思えます。何かこうありたい、と目指す姿に向かって邁進する生き方は、とても大きなエネルギーがあふれていますね。
その中で次のような言葉がありました。

何かにこだわったり執着したりすることより、常に、昨日までの自分、それまでの自分の枠を取り外すことができるかどうかを考えて行動するのが大切なのではないかと思うのだ。
どんなに地道に築き上げてきたことがあったとしても、いつも自分が作った世界から一つ上の世界へと上がっていけるか。
それは決して世間で言うところの地位や名誉ではなく、そういうことにどうチャレンジしていけるか。
そこに、生きることの喜びがあると思う。

引用文献:
佐渡裕(2010)『僕はいかにして指揮者になったのか』新潮社, p.132

病気でしばらく療養していた時期が長く、これからどうしようかと悩んでいる思春期のお子さんにとって、こういう生き方をした大人がいるんだと知ることは、心が切り替わるきっかけになるかもしれません。自分の心の中で考えが、ぐるぐる、もやもやしている時は…。
「枠」は自分自身が作ってしまうものですから。
この佐渡先生の本を読んで、仏教の立場で考える「苦しみ」のことを思い出しました。大学院でインド思想を教えてくださった佐藤先生が書かれた本から抜粋してみましょう。この本は固い学術仏教書ではないので、一般の方も手に取れると思います。

苦しみは次のよう定義されます。
思い通りにならないこと
自己の欲するままにならぬこと
われわれが自由ならざる境地にあること

引用文献:
佐藤裕之(2005)『仏教と『十牛図』―自己をみつめる―』角川書店, pp.155-156

「思い通りにする」ということは執着に基づく行動であり、「自己の欲するままにならない」すなわち、その執着が叶わぬことが、苦しみを生み出すものなのですね。佐渡先生が示された行き方は、自由奔放なイメージを抱えているけれど、でも日々の小さな執着を手放して、そうした苦しみから解放されて、遥かな先にある自分の夢に向かって頑張るということを意味しているのかなあと思いました。

 
フルート科に進んだ青年が指揮者として大成していくためには、たくさんの試練と努力と、チャンスをつかむ力と夢を見る力が必要でした。一読お勧めいたします。あなたの元気につながるように。
2014/4/30  長原恵子